夢幻回航
あらすじ
鬼対人間どっちが強いのか! その夜は、月が血のように真っ赤に滾っていた。風は無く、夏だというのに、空気は妙に冷たく感じられた。空は赤い月明かりで照らされて、真っ赤な雲で覆われていた。血の色のような赤が、空一面ににじんでいた。草原に虫も鳴かず、田んぼにも畑にも、森にも土や植物の臭いすらなく、用水路に流れる水の音も聞こえなかった。上空にも風がないのか、雲の動きも見ることが出来なかった。音も無く、ただ漫然と時間だけが過ぎて行く。いや、その時間さえも止まっているようであった。赤い月明かりに照らされた建物や木々の影は、赤黒く見えていた。ねっとりとした密度で、その場の空気が淀んでいる。そんな空間に、少しばかり場違いとも思える声が、辺りに響いた。「こんな時は鬼が出るぞ!」どこからともなく現れた老人が、真っ赤に照らされて血に染まったように見える身体をよじりながら、ゆっくりと月を見上げる。誰に言ったのか、誰も居ないその場所で、独り言だったのか、それを聞きつけた者が居た。これもまた、どこからともなく現れて、老人の3メートルほど後ろに立つ若者の姿があった。
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